1億ドルの記憶
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インタラクティブノベル(R)No.3
1億ドルの記憶
きみは、多少警戒しつつも、老人に近づいた。ベッドの脇で姿勢を低くし、老人の話を
聞きとろうとした。彼はとぎれがちな声で言った。
「おまえさんはやつらの仲間じゃなさそうだな」
「うん、閉じ込められた部屋から逃れてきたんだ。そういうあなたは?」と、きみ。
「わしもとらえられてる」
「なぜ?」
「それが、わしにもよく分からんのだ」
「ぼくと一緒に逃げるかい」
「無理だ。わしにはもう逃げ出す気力も体力もない。やつらもそれがよく分かっているか
ら、ドアに鍵もかけてない」
「……」
「だが、おまえが逃げるつもりなら、いいものをやろう」
老人はふとんの中の左手をもぞもぞと動かした。まもなくその手はきみの目の前にさし
だされた。手の平に1つの鍵が乗っている。
「これは?」
きみがきくと老人は答える。
「わしはもともとこの建物の工事にかかわった錠前職人だ。この鍵は、建物のたいていの
ドアをあけることができる、マスターキーだ。持って行け、役に立つだろう」
きみはその鍵をつまみあげ、見つめる。
「よくこんなものが……取り上げられずに……」
「やつらは、これの存在そのものを知らないからさ。さあ、急げ。早く行け」
きみは老人に礼をいうと、マスターキーをにぎりしめ、ベッドを離れた。
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