1億ドルの記憶
きみはホテルの部屋から市川に電話した。ベルが2回鳴って、受話器を取る音がした。
「市川さんですか。突然、つかぬことをお聞き……」
一種のあせりがあったのだろう、きみは相手が話しだすより早く、しゃべりはじめた。
が、なんとなくようすがおかしい。まるできみのことばを聞いていないように、市川らし
き声が流れ出した。
「こちらは市川昇です。ただいま留守にしています。お手数ですが、あなたのお名前・ご
用件を……」
そうか、ようすが変だと思ったら、留守番電話なのだ。テープの声がつづく。
「……お話しください。留守番電話が受けたまわります」
黙って電話を切る
テープに向かってしゃべる