1億ドルの記憶
きみは由芽しほりに電話した。彼女が勤める会社である。ヘルが鳴るやいなや、交換手
が出た。
「もしもし、由芽しほりさんをお願いします」
「失礼ですが、どちらさまでしょうか?」
きみは困った。なにしろ自分の名前が分からないのだ。一瞬沈黙してしまう。
「もしもし、どうなさいました?」と交換手。「たいへん恐縮ですが、由芽はちょっとし
たトラブルにまきこまれておりまして、お名前の分からない方はおつなぎいたしかねます」
「あ、いや」
きみは何か言いかけたが、もう遅かった。電話は切られてしまった。
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