1億ドルの記憶
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    1億ドルの記憶

(1時間か……)

  きみは、しぶしぶながら、待つことにした。店内ロビーの片隅で、チラシやパンフレッ

ト類を見ながら、ひまをつぶす。東南アジアのチラシの中の写真に、最近見たような気が

する光景があった。

  予定より早く、しほりは戻ってきた。きみの顔を見るなり言った。

「あら、先日はありがとうございました。夏の香港、いかがでしたか」

「ぼくは香港に行ってたの?」

「??  ええ……うちでチケットをお求めいただいて……」

  ほかの客や同僚が不思議そうな顔でこちらを見ている。

「由芽さん、ここに応接室はある?」

「はあ……こちらへどうぞ」

  きみは狭い簡素な部屋に通された。彼女と向かい合って、きみは事情を話した。

「あなたは、鷹見秀彰さんです。先月――8月25日から28日まで、うちの香港ツアー

に参加されました。添乗員から報告がきています。もっとも、このツアーはほとんどフリ

ータイムなので、現地の鷹見さんの行動などは分かりませんが」

「往復の飛行機は、ツアーメンバーと一緒だったんですね」

「そうです。成田で解散するまでは」

  壁のカレンダー時計が9月3日を示している。とすると、帰国の日と脱出の日を含めて、

6日間の状況が不明だある。もちろん、8月24日以前のことは、棚に上げての話だ。

  きみはしほりのオフィスを出た。



  自分の身元調べをつづける



    身元調べはこれぐらいにしておく