1億ドルの記憶
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インタラクティブノベル(R)No.3
1億ドルの記憶
いろいろな人と会い、マスコミに触れているうち、断片的にではあるが、記憶は戻って
きた。これまでに得られた情報・ヒントを総合すると、きみの身分・経歴、そしてきみが
光神会に捕らえられた事情が、次のように浮かびあがった。
きみの名は鷹見秀彰。元東西大学理学部助手、宇宙開発事業団職員。専門は遺伝子工学
だが、スポーツ・外国語にも強い。目黒区在住、独身。風穂鈴音というガールフレンドが
いる。
数年前、スペースシャトルに乗り込む日本人PS(ペイロードスペシァリスト=特別乗
組員)が、宇宙開発事業団により募集・選考された。きみはそれに応募し、533人の応
募者の中から最後の3人まで残った。いわゆる〈日本人初の宇宙飛行士〉候補となったの
だ。
実際に乗り込めるのは、3人のうちの1人だけである。しかし他の2人も、本来の飛行
士に事故が生じたときすぐ交替できるよう、本来の飛行士とまったく同じ内容・スケジュ
ールで、訓練・調整するのだ。そのため、打ち上げの6か月前からは、テキサス州ヒュー
ストン・ジョンソン宇宙センターに、事実上のカンヅメ状態になる。
その打ち上げだが、初めの予定では198Y年1月だった。それが8月に延期された。
それにともない、ジョンソン宇宙センター入りも1月中旬まで延期された。
そこできみは、調整のためNASAに拘束される前、8X年から8Y年にかけての年末
年始、香港に旅行することにした。アジア旅行社――担当・由芽しほり――に、手配を頼
んだ。
ところが、どういう事情か打ち上げは再変更され、8Y年4月にくり上げられた。「遅
れることはあっても早まることはない」というのが常識だっただけに、関係者一同あわて
た。しかも、このスケジュール変更はマスコミ・一般にはまだ伏せられていた。
PSすなわち民間人を乗せることによって、何かをカモフラージュするのではないか?
きみはそう思った。だとすれば、SDI=戦略防衛構想(いわゆるスターウォーズ計画
)がからんでいるかもしれない……きみは、そうも考えた。
スケジュール変更はPSにはもちろん知らされ、カンヅメになるため、8X年9月早々
アメリカに渡ることになった。さて、旅行はどうするか。きみは迷ったすえ、結局こちら
もくり上げて決行することにした。〈あわよくば鈴音も一緒に〉と思ったが、彼女の勤務
先(五井物産)で休暇がとれなかった。
きみが単独参加したのは、8X年8月25日成田出発、同29日帰国という4泊5日の
ツアー。そして28日が、いまにして思えば、運命の日だった。
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